東京地方裁判所 昭和55年(ワ)3731号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
【説明】
当事者双方の主張事実の骨子を示せば、次のとおりである。
「一 請求原因
1 本件各建物は、もと訴外松永舗道工業株式会社が所有していたものであるが、昭和五五年三月六日、不動産競売手続において、原告が競落し、同年四月四日、競落代金を完納して、所有権を取得した。
2 被告は、本件各建物につき、それぞれ賃借権設定登記(以下「本件登記」と総称する)を経ている。
3 よつて、本件建物所有権に基づき、各登記の各抹消登記手続を求める。
二 抗弁
被告は、昭和五四年五月二八日、当時の所有者訴外松永舗道から、本件建物を賃料月額合計金三四万六〇〇〇円、期間三年の約定で借り受けそれぞれ本件登記を経たのである。
三 再抗弁
仮に、本件建物につき、被告と訴外松永舗道との間に被告主張の賃貸借の合意が存するとしても、当該合意は、被告と訴外松永舗道とが通謀し、競落人に対抗しようと工作してなした仮装の合意であるから無効である。
1 本件競売事件における、東京地方裁判所執行官作成の昭和五四年八月二三日付賃貸借取調報告書には、その当時被告が占有していた物件は、本件建物の全部ではなく、本件(一)および(八)建物と本件(二)建物の一階部分(なお、この一階部分は、訴外三永株式会社(以下「三永」と云う)と被告との共同占有)とである、と記載されていた。
2 しかし、本件建物競落後に原告が当該建物を現地調査したところでは、被告も訴外三永も右報告書の記載にある占有をしておらず、訴外有限会社大盛組が単独で本件建物の全部を占有中であつたので、原告は、昭和五五年四月一四日、訴外大盛を債務者として東京地方裁判所に本件建物の占有移転禁止め仮処分を申請し、同日、当該仮処分決定を得、翌一五日、右仮処分決定を執行した。
3 原告は、同月二三日、訴外大盛を相手方とする本件建物の引渡命令を得たので、同年九月一三日、右引渡命令の執行を開始した。しかし、当該執行に立会をした大盛組代表者大盛正士は、本件(一)ないし(三)、(五)、(七)および(八)建物につき被告の占有関係を陳述するに至つた。これがため、執行官において調査がなされ、本件(一)および(八)建物を除いたその余の本件建物は訴外大盛が占有中であるとの認定がなされ、同月一八日、再度の執行を試みた結果、先に施錠されていて調査未了の右本件(一)および(八)建物は被告が占有中であると認定されたので、結局、本件(一)および(八)建物に対する前記不動産引渡命令の執行は不能に帰した。
4 そこで、原告は同年一〇月一日、被告を相手方とする本件(一)および(八)建物についての引渡命令を得たので、一七日に右引渡命令を執行し本件(一)および(八)建物の引渡を受けた。
5 被告は、右引渡命令執行につき、執行方法の異議の申立等をなさないだけでなく、同年一一月一一日付内容証明郵便をもつて、原告に対して「本件(一)および(八)建物内に存した被告所有の有体動産を原告が保管しておく必要はないので、これを所外に出しておいて欲しい。」とさえ通知してきている。」